秋になると柿を見かけるたびに、
「これをカクテルにしたらどうなるんだろう」と考えます。
しかし、柿は扱いがむずかしい果物です。
甘い、柔らかい、そして存在感が強い。
間違えると、彼だけが主役を奪っていくタイプの果物です。
(悪気なく、堂々と。)
そこで今回は、日本酒とアマレットを相手役に選んでみました。
甘い柿と香りのアマレット、そこに“冬酒”のキレを合わせる。
この三者なら、なにか起きると信じて。
■ 材料(1杯分)
- 日本酒(冬酒)……40ml
NOGUCHI NAOHIKO SAKE INSTITUTE 冬酒
→ 辛口程度が良い。甘口だと柿と同じで、甘さが重なり過ぎて感じにくくなる。 - アマレット……15ml
→ 柿と日本酒を“秋の和菓子”に変換する香りの主役。 - 柿ペースト……大さじ1(約15g)
→ 完熟の柿をスプーンでつぶすだけでOK。 - レモン果汁……5ml
→ 柿のまったり感を締めてバランスが良くなる。入れすぎ注意。 - 飾り用の柿スライス
■ 作り方
- 完熟柿をスプーンで潰し、ペーストを作ります。少し繊維が残るくらいがちょうど良いです。
- シェーカーに、日本酒・アマレット・柿ペースト・レモン果汁・氷を入れ、しっかりシェイクします。
- ロックグラスや小さめのワイングラスに静かに注ぎます。柿色の薄いオレンジに、アマレットの琥珀色が筋のように混じり、“夕暮れの月”のようなニュアンスが出ます。
- 仕上げに、残骸の柿をそっと飾れば完成です。
■写真(見た目は良い)
暗がりで写真を撮ると、グラスの下の方にたまる色味がよくわかります。
柿と日本酒、アマレットが重なった、やわらかな橙色と琥珀色のグラデーションがきれいに浮かび上がります。

■ 味わい
味わいは、まず日本酒にアマレットの杏仁の香りが立ち、
口の中の下の方でしっかりとした印象をつくりながら、鼻に抜ける香りを楽しませてくれます。
そのあとで、柿による“包まれる甘さ”がゆっくりと追いかけてきます。
決して、日本酒だけが主役というわけでもなく、柿だけが前に出ているわけでもなく、
程よくお互いの面白い顔を見せ合う一杯になりました。
■ そして飲み終わりに、ふと思ったこと
柿も日本酒もアマレットも、普段はまったく交わらない世界の住人です。
それがグラスの中だけは、“秋の夜長に語り合う三人組”のように仲良く並んでいる。
……まあ、最終的には私がその語らいに割り込んで、全部飲み干してしまうわけですが。
秋の味わいというのは、少し儚いくらいがちょうど良いのかもしれません。


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