味わいひと匙|十四杯目《柿月(かきづき)アマレット Sake》

味わいひと匙

秋になると柿を見かけるたびに、
「これをカクテルにしたらどうなるんだろう」と考えます。

しかし、柿は扱いがむずかしい果物です。
甘い、柔らかい、そして存在感が強い。
間違えると、彼だけが主役を奪っていくタイプの果物です。
(悪気なく、堂々と。)

そこで今回は、日本酒とアマレットを相手役に選んでみました。
甘い柿と香りのアマレット、そこに“冬酒”のキレを合わせる。
この三者なら、なにか起きると信じて。

■ 材料(1杯分)

  • 日本酒(冬酒)……40ml
    NOGUCHI NAOHIKO SAKE INSTITUTE 冬酒
    → 辛口程度が良い。甘口だと柿と同じで、甘さが重なり過ぎて感じにくくなる。
  • アマレット……15ml
    → 柿と日本酒を“秋の和菓子”に変換する香りの主役。
  • 柿ペースト……大さじ1(約15g)
    → 完熟の柿をスプーンでつぶすだけでOK。
  • レモン果汁……5ml
    → 柿のまったり感を締めてバランスが良くなる。入れすぎ注意。
  • 飾り用の柿スライス

■ 作り方

  1. 完熟柿をスプーンで潰し、ペーストを作ります。少し繊維が残るくらいがちょうど良いです。
  2. シェーカーに、日本酒・アマレット・柿ペースト・レモン果汁・氷を入れ、しっかりシェイクします。
  3. ロックグラスや小さめのワイングラスに静かに注ぎます。柿色の薄いオレンジに、アマレットの琥珀色が筋のように混じり、“夕暮れの月”のようなニュアンスが出ます。
  4. 仕上げに、残骸の柿をそっと飾れば完成です。

■写真(見た目は良い)

暗がりで写真を撮ると、グラスの下の方にたまる色味がよくわかります。
柿と日本酒、アマレットが重なった、やわらかな橙色と琥珀色のグラデーションがきれいに浮かび上がります。

柿月アマレットSake 暗がりでの色合い

■ 味わい

味わいは、まず日本酒にアマレットの杏仁の香りが立ち、
口の中の下の方でしっかりとした印象をつくりながら、鼻に抜ける香りを楽しませてくれます。

そのあとで、柿による“包まれる甘さ”がゆっくりと追いかけてきます。
決して、日本酒だけが主役というわけでもなく、柿だけが前に出ているわけでもなく、
程よくお互いの面白い顔を見せ合う一杯になりました。

■ そして飲み終わりに、ふと思ったこと

柿も日本酒もアマレットも、普段はまったく交わらない世界の住人です。
それがグラスの中だけは、“秋の夜長に語り合う三人組”のように仲良く並んでいる。

……まあ、最終的には私がその語らいに割り込んで、全部飲み干してしまうわけですが。
秋の味わいというのは、少し儚いくらいがちょうど良いのかもしれません。

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