※本記事は、筆者が公開情報をもとに個人的に調べ・考えた内容を含みます。 専門的・学術的な断定を目的としたものではありません。
本作は著作権の関係上、ここには掲載しない。
画面越しに見ること自体が、この絵の主題と妙に噛み合っている気もする。
作品ページ(MoMA公式): Salvador Dalí, The Persistence of Memory (1931) | MoMA
冬になり、久しく風邪をひいた。 だが業務は忙しく、休めるはずもない。 朝出勤して、どんなに頑張っても、まだ昼にもなっていない。 そんな日が続いた。
なぜ、この絵を思い出したのか
熱があるせいか、時間の感覚が少しおかしかった。 時計を見ても進んでいる気がしない。 かといって、止まっているわけでもない。
空間そのものが歪んでいるような感覚。 そのとき、ふと思い出したのが、 時計が溶けている、あの絵だった。
作品について(基本情報)
この作品は、スペインの画家サルバドール・ダリ (Salvador Dalí, 1904–1989)による 《記憶の固執(The Persistence of Memory)》。
- 制作年:1931年
- 時代:20世紀前半
- 様式:シュルレアリスム(超現実主義)
- 所蔵:ニューヨーク近代美術館(MoMA)
ダリは、夢や無意識、非合理なイメージを 写実的な描写で描くことで知られる画家だ。 現実そっくりなのに、現実ではありえない。 その違和感が特徴でもある。
シュルレアリスムとは何か(簡単に)
シュルレアリスム(超現実主義)は、 理性や常識から解放された世界を描こうとした芸術運動だ。 夢、無意識、偶然、連想。 そうしたものを重視する。
つまり、「意味が分からない」こと自体が、 作品の欠陥ではなく、むしろ狙いだったとも言える。
一般的な解釈
溶けている時計は、 固定的で絶対的な時間という概念が、 実は流動的で曖昧なものだという象徴だと、 よく説明される。
物理的には正確であるはずの時計が、 役割を放棄している。 時間は測れるが、感じ方は一定ではない。 そうしたズレを描いている、とも言われる。
風邪をひいた私の考察
ただ、風邪をひいている身からすると、 この絵はもう少し素直に見えた。
本来、型にはまった時間の象徴であるはずの時計が、 時計としての意味を持っていない。 それが、妙に救いに見えた。
そもそも、誰が時計を発明したのだろう。 誰が「この時間にこれをしろ」と決めたのだろう。
社会人は、時間に縛られる。 そして縛られ続けることで、 自分から縛られにいくようにもなる。
時間に追われる大人の話
ピーターパンに出てくる 「チクタクワニ」は、 時間に追われる大人(フック船長)を皮肉っているものだとも言われる。
逃げても、逃げても、 背後から聞こえてくる時計の音。 子どもには面白く見えるが、 大人には恐怖でしかない。
夢のようで、悪夢のような構図
この絵の世界は、どこか夢のようだ。 だがそれは、楽しい夢というより、 熱が高いときに見る、 脈絡のない夢に近い。
左端のアリも気になる。 時計に群がる様子は、 まるでクッキーに集まるアリのようだ。 時間が、食べられているようにも見える。
それは、時間の劣化なのか、 あるいは時間という概念からの解脱なのか。 はっきりとは分からない。 分からないままで、いい気もする。
最後に
風邪をひいている今日は、 時計に従うのをやめて、 少し早めに寝ようと思う。
溶けた時計に尻を叩かれて怒られることは、 たぶん、ない。


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