リモコン片手の感想帖 第十二幕『プーと大人になった僕(Christopher Robin)』を観て──変わらないものの価値

リモコン片手の感想帖

はじめに(※ネタバレ注意)

本記事には、映画『プーと大人になった僕(Christopher Robin)』のネタバレを含む感想と考察が含まれています。
未視聴の方は、本編をご覧いただいてからお読みいただくと、より楽しめるかと思います。
ちなみに今回も、例によってお酒を飲みながら鑑賞していました。感情の精度が若干ゆるめですが、その点はどうかご理解ください。


作品紹介

『プーと大人になった僕』(原題:Christopher Robin)は、2018年に公開されたディズニーの実写映画です。
A・A・ミルン原作の「くまのプーさん」をベースに、物語は子ども時代から成長したクリストファー・ロビンを主人公として描かれます。

ロンドンで働く大人になったクリストファー・ロビンは、仕事に追われ、家族との時間や心の余裕を失っていました。
そんな彼の前に、かつて100エーカーの森で一緒に過ごしたプーと仲間たちが現れます。

本作は「子どもに戻る物語」ではなく、
大人になったまま、忘れていた大切なものを思い出す物語です。
効率や成果を優先する現代的な価値観と、「何もしない時間」や「変わらない存在」の価値を静かに対比させながら進んでいきます。

可愛らしい見た目とは裏腹に、テーマはかなり大人向け。
仕事、家族、過去、そして自分自身との距離に悩んだ経験がある人ほど、深く刺さる作品です。

いつまでも変わらないものの価値

この作品を観て、強く考えさせられたのは、「いつまでも変わらないものの価値」でした。

悲しいのは、大人になることで自然に忘れてしまうことではなく、
むしろ忘れようとしたことなのだと思います。

過去を忘れること自体は、案外簡単です。
忙しい、余裕がない、今はそれどころじゃない。
理由はいくらでも作れる。

そして、過去がふと顔を出してきたとき。
懐かしさや温かさより先に、
「今さら何だよ」「うっとうしいな」と感じてしまうこともある。

この映画のクリストファー・ロビンは、まさにその状態でした。


忘れたのではなく、切り離した

彼は、プーを忘れたわけではありません。
100エーカーの森を知らなくなったわけでもない。

ただ、今の自分には不要だと判断して、切り離した
仕事をする大人として。
家族を養う父親として。
効率と成果を出す人間として。

その判断自体は、決して間違っていません。
むしろ社会的には「正解」に近い。

けれど、その正解を積み重ねた先で、
彼は少しずつ、静かに空っぽになっていく。

このえがき方が、とても優しい。


過去は邪魔になることもある

正直なところ、過去はいつも味方ではありません。

未熟だった自分。
失敗した自分。
傷つけたこと、傷つけられたこと。

それらを思い出させる存在は、前に進もうとしているときほど、邪魔に感じる。

だから人は、「今は忙しいから」「また今度にしよう」そうやって距離を取る。

でも不思議なことに、昔の友人や過去のつながりは、遠ざけたあとで、ふと助けてくれたりする。

息抜きになったり、何も説明しなくても笑えたり、「今の自分」を無理に語らなくてよかったり。


変わらない存在は、責めない

プーたちは、クリストファー・ロビンを責めません。

「君は変わったね」とも言わない。
「昔に戻れ」とも言わない。

ただ、そこにいる。変わらず、同じ場所で。

この距離感が、この作品のいちばんの優しさだと思います。

変わらないものは、成長を邪魔する存在ではない。
忘れていた大切なものを、そっと思い出させる存在なのだと。


過去を切り離すのではなく、取り込む

この映画は、「子どもに戻れ」とは言いません。

仕事をやめろ、とも言わない。
効率を捨てろ、とも言わない。

ただ、過去を切り離すのではなく、過去も含めて成長できるという道を示してくれます。

クリストファー・ロビンが最後に選んだのは、子どもに戻ることではなく、
過去を抱えたまま前に進むことでした。

これは、かなり理想的で、かなり難しい選択です。


終わりに

結局のところ、私も、プーを忘れた大人の一人なのだと思います。

忙しいとか、疲れているとか、言い訳は山ほどある。

でも、たまに過去がノックしてきたら、「うるさいな」と言わずに、
少しだけ扉を開けてもいいのかもしれません。

……とはいえ。

もしプーが今、「何もしないって、とても大切だよ」
なんて言ってきたら、

「それは分かるけど、今日はちょっと無理」

そう返してしまう自分も、たぶんまだ、大人になりきる途中です。

公式予告編(非公開になってました)

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