はじめに(※ネタバレ注意)
本記事には、Netflix作品『でっちあげ』のネタバレを含む感想と考察が含まれています。
未視聴の方は、ぜひ本編をご覧になってからお読みいただけると幸いです。
ちなみに今回も、例によってお酒を飲みながら鑑賞していたため、記憶の曖昧な部分や感情寄りの解釈があるかもしれません。温かくご理解ください。
作品情報
- 作品名:でっちあげ
- 配信:Netflix
- ジャンル:社会派サスペンス/ミステリー
- テーマ:視点のズレ、正義の暴走、学校・家庭・世間の圧力
教師と生徒・保護者、それぞれの視点で「同じ出来事の見え方」が大きく変わっていく作品です。
一方の語りが“物語”を作り、もう一方の語りがそれを崩していく──
タイトルの通り、事実と印象の間に生まれる「でっちあげ」の怖さを描きます。
二日に分けて観た理由
この作品、私は二日に分けて観ました。
というのも、お酒で眠くなったから……ではなく、正直に言えば途中で胸糞が悪くなったからです。
ただ、その胸糞の悪さを感じた自分もまた、当事者でも何でもないのに、映画に引き込まれてしまった一人の観客だったのだと思います。
視点で世界が反転する構造
この物語は、教師側の視点と、生徒・親側の視点で、まったく世界の見え方が変わる構造になっています。
まず語られるのは生徒・親側の視点で、教師は「殺人教師」として形作られます。
観ているこちらも自然とその物語に乗せられ、いつのまにか、
「ざまあみろ」
「よくぞ親は頑張った」
「これで生徒は救われる」
そんな“正義が勝つ話”として消費してしまう。
「でっちあげです」の一言が、景色を変える
ところが、被告(教師)の供述「でっちあげです」という言葉が出た瞬間、物語の重心が一気に傾きます。
教師側の視点に立ったとき、印象は逆転します。
「なんて真面目で、良い教師なんだ」という感覚になっていく。
それなのに、殺人教師に仕立て上げられ、学校からも見放され、世間からは誹謗中傷を浴び、マスコミも容赦なく叩く。
ただ一つ救いなのは、家族だけは信じ続けていたということでした。
冤罪は「時間」で人を削る
冤罪を扱う作品ではよくある話ですが、こういう戦いはとにかく時間がかかります。
諦めて認めてしまえば、楽になる。
でも、それをやってしまえば自分が壊れるし、信じてくれた人を裏切ることにもなる。
この作品ではまず一年ちかくの地獄のような時間が描かれ、そこから不服申し立てを経て「体罰はなかった」と認められるまでに、十年がかかる。
長い。本当に、気が遠くなるほど長い戦いです。
なぜ教師は弱くなり、親は強くなったのか
ここで少し話を変えて、最近私が考えていることがあります。
なぜ教師は弱くなり、親は強くなったのか。
一つには、「教師=ただの人」という感覚が強くなったこと。資格を持った一職業人、という距離感です。
昔は「体罰」と「しつけ」が当たり前だった、という話を聞くことがありますが、戦争を経た軍人的な教育の名残もあったのだと思います。
古い校舎は生徒を監視しやすい構造になっている、なんて話もありますし。
でも今は、学校に行くこと自体が「権利」に近い。
教師が教えるのは当然で、そこに体罰が加わるなどサービスとしてありえない――そんな感覚が社会全体にある。
さらに人口減少で、子ども一人ひとりの価値が相対的に上がり、親が学校に深く関わることも“普通”になった(昔の子どもも、もちろん大事にされていました)。
結果として、教師や学校は、社会と親からも常に見張られ、がんじがらめになっているように見えます。
正義とは何か(そして、誰の正義が分からなかったのか)
この映画でやはり一番のテーマは視点だと思いました。
そして、「正義とは何か」。
PTSDを診断した医師は、患者の利益のためという正義。
弁護士は、依頼人のためという正義。
教師は、自分の名誉と無罪を守るための正義。
では、生徒・親側の正義は何だったのか。
正直、今回そこだけは最後までよく分かりませんでした。
だからこそ私は、筋が通らないと感じたのだと思います。
母親が、自分がなりたかった理想を子どもに重ねているようにも見えましたし、虚言的な部分は、ある種の“理想の物語”だったのかもしれません。
妬みや承認欲求に近いものも感じました。
演技が上手すぎて、余計に
それにしても、俳優さんの演技は圧巻でした。
被害者のふり、絶叫、追い詰められた表情――「さすがだな」と思わず感心してしまうほど。
そして困ったことに、上手い演技ほど、こちらの感情を揺さぶり、余計に胸糞を育ててしまうんですよね。
おわりに
この映画を観て改めて思ったのは、正義は混ぜ物次第で、簡単に毒にも薬にもなるということです。
そして私はというと、自分の正義とお酒をいい感じにブレンドしながら観ていたせいで、途中で胸糞が悪くなり、二日に分ける羽目になりました。
まあ、正義もアルコールも、濃すぎると胃に来る――ということで。
そんな映画でした。


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