今週の会議のダメージは消えないのに、夜ご飯買い出しくらいはサクッとすませたい。
私はレシピを頭の片隅でシミュレートしながらスーパーの自動レジへ向かった。
もやし、豚肉、そしてなぜか胃腸薬。考え事をしていると手が止まらない。
ピッ、ピッ、とバーコードを通していくはずの動作が、どこか抜け落ちているような感覚。
「あれ……左手のもやし、通したっけ?」と気づいたときには、遅い。画面を見ればよい話なのですが。
で、ここが問題だ。もし本当に「会計を通し忘れて」袋に入れてしまい、退店したら——犯罪になるのか?
1. 刑法(窃盗罪) — 「故意」があればアウト
要点:他人の物を盗むには「故意(盗もうという意思)」が必要。
- 故意があれば刑法第235条の窃盗に該当し得ます。
- うっかり・失念で故意がないなら原則窃盗には当たりません。
- ただし挙動や状況から故意と判断されることもあります(逃走・隠匿など)。
メモ:呼び止められたら素直に説明。逃げるほど悪意推認されやすい。
2. 民法(不法行為) — 結局のところカネの話
要点:刑事にならなくても、店に損害があれば賠償の対象(民法709条)。
- 商品の代金、対応コスト等の弁済で収まることが多い。
- 「うっかり」でも過失が問われることはあります。
メモ:気づいたら即戻って支払う。レシートとやり取りを残せば後腐れなし。
3. 店側ルール(営業上の対応) — 出禁や厳格対応もあり得る
要点:防犯方針により、再発防止のため警告・出禁・被害届提出があり得ます。
- 小額・初回・誠実対応なら「立ち合い払い」で収束しやすい。
- 常習や悪質と見做されると一気に厳格化。
メモ:自動レジは誤操作が起きがち。退店前に最終確認をルーチン化。
現実的な「即対応」マニュアル
- 気づいたらすぐ戻る。
- レシートやカゴの中身を示して説明。「通し忘れました」でOK。
- 逃げない・隠さない。態度が故意認定に影響しがち。
- カメラはある前提。映像で「過失か故意か」を見られる。
- 繰り返さない。常習は一線を越えます。
性善説の自動レジ、性弱説の人間
自動レジは性善説に立っている。機械は信じる、でも人間は忘れる。
もしレジに良心AIがいたなら、商品を手に取るたびに囁いてくれるだろう。「それ、会計した?」と。
「悪意なき万引き」はデジタル時代の新しい倫理問題かもしれない。
終わりに
結局のところ——うっかり会計忘れは人生の小さな冒険、逃げれば大きな裁判。
だから私は、今日もレジの前で深呼吸して、もやしをジッと見つめる。
もし、もやしが私を睨み返してきたら、それは会計未処理のサイン。
レシピの前に、食材と向きある。これにより、ある意味安心して夜ごはんを食べられるのだ。たぶん。
※本記事は一般的な解説であり、法的助言ではありません。具体的なトラブル・処分・請求対応は、必ず弁護士など専門家にご相談ください。法の適用は事案の事情・証拠によって結論が変わります。


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