リモコン片手の感想帖 第七幕

リモコン片手の感想帖

『罪と悪』を観た夜に 友達を懐かしむ

はじめに(※ネタバレ注意)

本記事には映画『罪と悪』のネタバレを含む感想が記載されています。
まだ未視聴の方は、本編をご覧いただいてからお読みいただくことをおすすめします。
ちなみに私は例によって、お酒を片手に鑑賞しました。アルコールの影響で多少の記憶違いがあるかもしれませんが、どうかご容赦を。


あらすじ

14歳の少年・正樹が何者かに殺害され、その遺体が町の中心にある橋の下の川で見つかる。
同級生の春・晃・朔は、正樹を殺したと疑った男の家へ押しかけ、もみ合いの末に男を死なせてしまう。その後男の家は放火され、事件は闇に葬られたかに思われた。

時が流れ、晃は父の後を継ぐように刑事となる。父の死をきっかけに故郷へ戻った晃は、朔と再会。そしてまたもや橋の下で少年の遺体が発見される。20年前と同じ状況だった。
やがて春とも再会し、彼ら3人が心に閉じ込めていた過去の事件が、再び姿を現し始める――。


感想と考察

率直に言うと、面白かったです。序盤から描かれる警察の世界、地方の小さなコミュニティ特有の人間関係や息苦しさ。それらが物語に厚みを与えていました。
小さな町だからこそ見えてしまう「つながりの濃さ」や「裏に潜むどす黒さ」が、画面を通してじわじわと伝わってくる感覚。ノワール映画らしい空気感がよく出ていました。

ただ、ひとつ物足りなく感じたのは、小林という人物の死についてです。彼が川で発見され、過去の事件を彷彿とさせる演出は理解できるものの、その背景や繋がりが薄く、死の重みが軽く扱われてしまったように思えました。 「あの死にもっと意味を持たせても良かったのでは?」というのが正直な印象です。


登場人物の関係性

春・晃・朔の3人の関係性は本当に良かった。

  • 春は仲間2人の罪をすべて背負って少年院に入り、そこから裏社会に足を踏み入れていく。
  • 晃は父と同じ警察官となり、法の側に立ちながらも過去に縛られる。
  • 朔は実家に残り、農業をしながら地元に根付いて生きている。

三者三様の道を歩みながらも、彼らを繋ぎ続けているのは「正樹の死」という過去の一点でした。

ラストで晃が朔を手にかける展開は衝撃的でした。 これは「復讐」でも「けじめ」でもあり、同時に朔を楽にしてあげる行為でもあったのかもしれません。朔は最後まで否定を続けていましたが、真相は語られず曖昧なまま。観る者に解釈を若干委ねる結末だったと感じます。


すべての元凶

結局、全ての根にあったのは「おんさん」と呼ばれる男の存在。
彼の存在そのものが、子どもたちの運命を狂わせていった印象です。 こうした「過去からの呪い」のようなものが物語に漂っており、単なる事件ものを超えた余韻を残しました。


終わりに

もし、あの時4人全員が無事に生きていたら。そんな「もしも」を考えるのは楽しいですが、そうなると平凡で映画にならない。
だからこそ、この作品はノワールミステリーとしての強度を保ちつつ、人の生き方や選択の重みを描き切ったのだと思います。
お酒片手に観るには重たい内容でしたが、観終わった後に考え続けてしまう、良い余韻を残す作品でした。


公式予告編

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