採用ひとこと草紙  草三

採用ひとこと草紙

「長所はまじめ、短所はまじめすぎる」


外国人就職希望者との面接。
まず最初のひと言としておなじみの、

「自己紹介をお願いします。」

こちらとしては軽くアイスブレイクのつもりなのだけど――
返ってくる自己紹介が、なぜかどれも同じ香りがする。


世界自己紹介テンプレート連盟でもあるのか説

「はじめまして。私の名前は〇〇です。〇〇国から来ました。〇〇学校で日本語を勉強しています。長所はまじめなところで、短所はまじめすぎるところです。」

…もう聞きすぎて、語尾を先読みできる域に達した日もありました。
「はいはい、まじめね。で、“すぎる”んでしょ?」と、心の中で合いの手を入れてしまうレベル。


なぜ似るのか?真相を探ると…

あとで本人に聞いてみると、
・一緒に住んでいる仲間同士で練習している
・面接対策動画を一緒に見て暗記している
・「これが一番よさそうだ」と、先輩が書いた紙を丸暗記してきた
・ネットで拾った例文をそのまま覚えた

などなど、なるほど、そういうことかという事情が出てきた。

努力していないわけでは決してない。
むしろ、「間違えないように必死に覚えてきた」という姿勢には拍手を送りたい。


でも、聞いてる側はこう思っている

ただ、採用担当としては――
あまりに“テンプレどおり”だと、本人の姿が見えないのも本音。

だから私は、自己紹介の後に少しひねった質問をするようにしている。
たとえば:

  • 「最近、日本語で勉強した言葉はどんな言葉ですか?」
  • 「家では何をしているのですか?」
  • 「短所がまじめすぎるとのことですが、最近“まじめすぎた結果”って何かありました?」

こういう質問には、テンプレで返すのが難しい。
でも、それがいい。

表情が変わる。言葉が詰まる。笑顔になる。
そうして、ようやく「その人自身」が見えてくる。


テンプレに頼るのは悪くない。でも…

テンプレートは“最初の一歩”を安心して踏み出すための杖のようなもの。
でも、そのまま面接を最後まで歩くには、ちょっと足りない。

だからこそ、こちらも工夫するし、少しでも話しやすい空気を作りたい。
笑ってもらえたら、そこからが本番だと思っている。


和歌でひとこと

真面目です まじめすぎます 聞き慣れた
されど笑顔に 嘘はなかりけり

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