採用ひとこと草紙  草二

採用ひとこと草紙

「日本語って、どれくらい話せればいいですか?」


国外にいる外国人の方とのオンライン面談。
「日本で働きたい」という真剣な気持ちが伝わってくる、前向きな印象の面談だった。

面談の本題が一通り終わったあと、私はこう伝えた。
「せっかくなので、何か質問があればどうぞ」――いわゆる“逆質問タイム”である。

すると彼は、少し迷ったあと、まっすぐに尋ねてきた。

「求めている日本語のレベルは、どれくらいですか?」

これは、採用面談では定番ながら、毎回悩ましい質問だ。


日本語レベルの“正解”って?

一般的には「日本語能力試験(JLPT)」というものがあり、
N1(最上級)からN5(初級)までのレベル分けがされている。

外国人採用の場合では、N3やN2を目安にしていることが多い。
「安心して任せられるレベルはN2くらいかな」といった声もよく聞く。
でも実際のところ、“その資格があっても通じない”ことは少なくない。


試験より難しい、現場の言葉

理由は簡単だ。
日本語学校では“標準語”しか教わらないのに、
実際に働く現場では“方言”が飛び交っている。

関西、東北、九州、どの地域にも独特のイントネーションと語彙がある。
しかも、それが“日常会話レベル”で使われる。
日本人ですら聞き返すような言葉を、外国人がすぐ理解するのは難しいのは当然だ。


教科書には載っていない現実

また、面接時に日本語が多少できていても、
実際の仕事現場では聞き取れなかったり、
「それ、学校では習っていません」と話がでることもある。

でもそれは、責められるようなことではない。
むしろ、受け入れる側が“現場の日本語”にどう触れてもらうかを工夫すべきだと思う。


私個人の回答:YouTubeで“生きた日本語”を

だから私は、こう答えた。(通じているのか、定かでない)

「正式な日本語の資格はあるに越したことはないけれど、
それ以上に大事なのは、日常の言葉に触れておくことです。
日本に来る前に“日本語のYouTube”をたくさん見てください。」

アニメでも、バラエティでも、街録インタビューでもいい。
とにかく、“いろんな日本語”を耳に入れておいてほしい。

「こういう場面では、こう返すのか」
「今の言葉、なんて意味だろう」
そんな引っかかりが、きっと力になる。


そして、こう続けた。

「あとね、日本では“聞き取れたこと”と“笑顔で返せること”、この2つが大事なんですよ。」

彼は少し驚いた顔で笑って、
「わかりました!」と、元気よく返してくれた。

その瞬間、すでに言葉の壁は一段、越えられていた気がした。


和歌でひとこと

試験より 動画に宿る 生き言葉
方言まじりで 笑うも勝ちよ

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